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プロローグ
九世紀から十世紀にかけて、我が国――大和国の治世は乱れていた。
各地で起こる貴族――現代では華族と呼ばれる身分を持つ者たちが繰り広げる権力闘争。 その権力闘争に付き合わされる多くの民は、ある者は戦で死に、ある者は飢えて死に、またある者は賊になぶり殺されもした。
朝廷内では貴族が政務を蔑ろに風流三昧に暮らし、各地で貴族同士の小競り合いが繰り返される中、京の都から遠く片田舎の関東で力をつけた一人の武士がいた。
彼は関東での権力闘争を制した後、自らを新王と名乗り、大和朝廷に謀反を起こした。
後に大和国史上、最も畏怖の対象となる彼の名前は、平将門。
将門は京を目指して進軍を開始した。
その動機は未だ明確に解き明かされていないが、自らの祖先が大和国王の一族であるにも関わらず、下級貴族や東夷などと言われて上級貴族に蔑ろにされたからだとも、はたまた片田舎の関東で平氏一門の内部闘争や、源氏との争いを繰り返すうちに叛意を抱いたとも言われている。
度重なる朝廷からの討伐軍を幾度となく撃破し、関東一円を支配した平将門であったが、間もなく藤原秀郷や平貞盛らによって討伐される。
討伐された将門の首は、朝廷に対する最大の反逆者として京の七条河原に晒された。
しかし、異変はここから始まる。
七条河原に晒された将門の首は、毎夜毎夜、呪詛のようなものを吐き続けたのだ。
そして、ある日を境に将門の首は七条河原から消え、やがて関東で再び反乱軍が決起された。反乱軍の大将は、首を討たれたはずの平将門だった。
その後、幾度となく朝廷は討伐軍を送るが、数多の犠牲を払い、将門の首を討とうと、死者の軍である将門を討ち取ることは結局できず、幾度も蘇っては反乱軍を起こす。
平将門と大和朝廷との戦乱は一世紀近くも続いた。
民はいつ死者の軍が責めてくるのか、自分たちも死者の軍に加えられてしまうのではないかと日々怯えていた。
そんな約一世紀に渡って続いた平将門との戦乱を終わらせたのは、優れた兵器や、多くの兵士や民の犠牲によるものではなかった。
既存の兵器を用いた戦は、新たな戦闘兵器を前に為す術もなく葬り去られた。
その戦闘兵器の名前は――召喚獣。
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