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初めて召喚に成功した源頼光が男性であったためなのか、召喚術の理論は男性にしか適用されない。
そうなると男性の役割は必然的に戦闘要員。
召喚術を使えない女性や大和国の要人である高家を守る立場になる。
だが、世の中は決して善良な召喚士ばかりではない。
長らく続く召喚士の歴史の中で、残念ながら犯罪行為に召喚術を用いる輩も出現しているのだ。
大きな戦の無い昨今、召喚士の役割というのは主にそういった犯罪行為に召喚術を用いる輩から要人を警護することである。
特に、自ら召喚術を用いることのできない女性の要人を警護する――それこそが国立召喚士学園の存在意義となっている。
しかし、召喚士は決して安全な職業ではない。それは学生であっても同様である。
犯罪者によって殺される召喚士もいれば――自ら召喚した生物に殺されることもある。
そういった事情もあり、召喚士学園の定員は男性百人に対して、女性は五十人。
一人死んでも、もう一人は代わりの召喚士が備えている状況だ。
しかし、これはあくまでも選定試験を受験する人数で、第二学年に進学できる召喚士の数はピッタリ五十人だ。
護衛召喚士として、一族の誇りと責任を背負っている者。立身出世を夢見る者。そして――家族を食わせるために命を懸ける者。召喚士を志す学生の心情は実にさまざまである。
学生とはいえ、召喚士は命を懸けて華族の令嬢――いわゆるお嬢様を守護する。その対価として支払われる金額は、学生といえど通常の職業で稼ぐ社会人の給与より遥かに大きい。
毎年、大金や後世に名の残るような名誉を求め、多くの若者が召喚士学園の門を叩き――そして無残に散っていく。
無事に召喚に成功し、お嬢様に指名されて2年に進学できる者の多くは英才教育を受けてきた華族の男たち。
基本、華族の家では嫡男は政治、嫡男以外の男は召喚士となり華族のお嬢様の護衛をする道を進むものだ。
無事に召喚に成功しても、どこの誰とも知れぬ身分の多くは強力な召喚獣を召喚することはできず、一人のお嬢様からも指名されることなく学園を去ることになる。
お嬢様たちの前で選定試験を行い、召喚士を目指す学生は試験で初めて召喚を行い――同級生と勝負を行う。
今まさに、そんな厳しい選定試験を受ける貧乏人がいた――。
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