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三日間に及ぶテストが終わり、授業では次々に点数の付いた解答用紙が帰ってきた。
“70点かぁ…まぁ、昼寝の割にはいい点だろ”
古典の時間、赤ペンで隅の方に書いてある数字をみながら一人でに思った。
解答用紙がクラス全員に配られると、独特のイントネーションを持つ先生が手を叩き、注目するように促した。
「今回のテストでは、木風(このかぜ)さんただ一人が満点でした。
はい。みなさん拍手!」
“この古典で満点とれるやつがいたのか。”
そう思っていると、クラスの変な雰囲気に違和感を覚えた。
拍手をするクラスのみんなが“すごい”という反応より、“なんで”といった反応だったからだ。
そのためか、拍手もパラパラとしていてまとまりがない。
「おい、壮太。なんでみんな、しけたような反応なんだ?」
すかさず、後ろに座っている壮太にきいた。
「はぁ?だっていつもよそ見して、授業を聞いてんのかわかんないようなあの木風さんだぜ…
そりゃ、何でってなるだろ。」
「…悪りぃ俺は寝てたからよくわかんね。」
「お前、寝過ぎ…」
壮太は困ったように笑っただけであった。
“いつも、よそ見…”
壮太の声がひっかかり、僕はちらっと木風さんの方を見た。
窓際の席の彼女は、窓の方を向きぼーっと遠くを眺めていた。
“なに見てんだろ…”
そう考えていると、後ろからつつかれた。
「なぁ、龍生ぃー。
ここの答えなんだった?」
「あー。俺もわかんね。」
解答が2人とも共倒れしていることを話しつつ、僕は少し木風さんが何を見ているのか気になった。
その後の授業でも、ちらっと窓際に座る木風さんを見た。
確認したたけでも一時間の授業で二回以上は窓を眺めている。
“いったい、何をそんなに見てるんだ?”
小さなことだが不思議に思うと、つい考えてしまう。
五限目、弁当を食べた後の授業はみんな睡魔に負ける。
数学の時間…
暗号のような数字にみんな呪文をかけられたように次々にダウンしていく。
僕はふと、彼女のことが気になり、窓際を見る。
やはり、窓の外を眺めていた。
“ある意味で、すごい集中力…”
僕がそう思っていると、
ハッとした様に彼女は黒板を見て、必死にノートに移していた。
その様子を、しばらく眺めているとふいに木風さんがこちらを見た。
僕は気づくのが遅れ、そのまま目があってしまった。
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