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少し動揺した僕に、彼女はニコッと微笑んで、また机に向かった。
慌てて僕も顔を机に向けた。
“なんか、調子狂う。”
これは僕だけではなく、クラスのみんながその様だ。
木風さんは学年でトップを誇るほどの、不思議ちゃんだ。
要するにかなり変わっている。
そのためか、今時の女子高生のチャラさはなく、大人しめの子だった。
だが、不思議ちゃんの行動ぶりはチャラい女子高生を上回っていた。
それは入学したばかりで、みんながまだ学校に慣れていない頃の話だった。
生物の授業の余興で生き物について不思議に思っていることはないかと先生が聞いた。
木風さんはすっと手をあげて立つと、
「なぜ、生き物はいつか死んでしまうのに、生きているんですか?」
と質問した。
この質問にはさすがの先生も目が点になっていた。
だが、先生はニコッと笑いこう答えた。
「木風さんは面白いところに目をつけましたね。
これは、自論ですが…
生き物は死ぬから生きるのですよ。」
それから、木風さんの不思議ちゃんのイメージはすっかり定着してしまった。
一部の女子は可愛いと言い、また一部の女子は馬鹿にしている。
午後の授業がすべて終わり、学校から解放された。
「うーーん。やっと終わった!」
凛太朗が背伸びをしながら、立った。
「お前はほとんど寝てただろ。」
冗談かましながら、僕は凛太朗の肩をぽんと叩いた。
「お前もな。」
凛太朗が笑いながら、返事をした。
「やべ。ばれてた?」
そんな、くだらないことを話しながら、今日も三人で笑いながら駅まで向かう。
「あっ!俺は明日はかりんと帰るから」
少し恥ずかしそうに凛太朗がいった。
「おいおい。デートですかぁ~?」
すかさず、壮太がちゃかした。
「まぁな。じゃ、またなー!」
壮太のちゃかしにもめげずに、凛太朗は気持ちよくホームへと去って行った。
ホームに向かいながら壮太はコホンと咳払いをすると遠慮がちに言った。
「なぁ、また頼まれちまった。」
すまなそうに僕に顔を向けた。
「あの…これ、都(みやこ)くんに渡して下さい。
だとよ。」
壮太は少し声のトーンを上げて、依頼された伝言を僕に伝えた。
「再現しなくていいから…」
呆れた様に壮太に言うと、渡されたものを受け取った。
紙にはメールアドレスが書かれていた。
そして、一言添えてある。
“前から気になっていました。良ければお友達からでも始めましょう。”
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