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その覚悟をしっかりと見せつけられた指揮官の気持ちなど、誰一人として分かるはずもなかった。 彼は指揮を取らなければならない責任と苦痛を感じ、その場で一番最善の策だと思われる適切な言葉を発する。 その指揮によって死に急ぎ野郎だと言われても兵士はそれを受け止めて、指揮通り扉の向こうへと剣を抜かなければならないのに。 無残にもその二文字の言葉によって自分の命が絶つということだとしても、それに兵士は誇りを持って、国民はそれを栄誉だと称える。 こんな、こんな残酷な事をしてなんの意味がある。金の鎧は、瞳に微かな怒りを孕んで震えていた。 自分は指揮を取るだけの無能なのに、人を殺しに向かわせているくせに自分は何年ものうのうと生きていて。 それでも真当しなければならないなんて、世界は酷く残酷で、残虐だ。 金の鎧は、静かに目を閉じた。 この世界から背けるように。
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