Last

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 だから、せめてもの贈り物をしてやろう。 「人間界では、クリスマス・プレゼントとでも言ったか」  子供を懸命にあやす女の傍らに立つ。殺気は慈愛に、絶望は小さくても希望へと変わっている。  すっと手をかざし、俺は子供の額に触れる。一瞬だけ笑顔を俺に見せると、すやすやと子供は寝息を立てた。 『何を……?』 「パパとママの所へ、このお姉さんが連れていってくれる。だから心配しないで、おやすみと伝えたまでだ」  俺の言葉に、男はくしゃりと顔を歪める。 『ありがとうございます……ありがとうございます!』  礼などいらない。俺は職務を全うしたまで。  最期の日がやって来る。  魂と化した男を体内に呑み込むと、俺は飛んだ。  遥か宇宙の彼方から、この星に吸い込まれた孤独な塊は、まだ泣いていた。 【Last・完】
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