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「自分で言い出したんだよ、あたし……」
「……」
真田の少し潤んだ瞳が、じわりと揺れる。
やがて、何か諦めたようにその瞼が閉じられて、真田の口唇からは「……はっ」と笑いとも溜め息ともつかない息が漏れた。
「……だよな」
真田の両腕が、あたしの腰に回される。
まるで持ち上げるみたいに抱きすくめられて、彼の口唇は再びあたしのそれを塞いだ。
ぬるりと侵入してくる真田の舌が、気持ちいい。
それを伝えることもせずに、あたしは夢中で味わった。
こうしてる間は何も考えなくていいって、あたし自身気付いてるからなのかも知れない。
狡いかな。
……卑怯なことかな。
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