それぞれの道

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傍の木に片手をつき苦しそうに息を整えようとする。 この世界の男性聖機師は少数であるがために例外なく特権階級とされ、希少な存在であるが故、官位や職位を持ったとしても実務は一切する必要がないのだ。 護衛や警備などさせて怪我でもすれば大きな損失をまねくからだ。 シトレイユのラシャラ・アース皇女の言葉を借りるなら『例えるなら聖機師は競走馬で男性聖機師は種馬じゃな。』 まさに至言である。 それはさておき、ダグマイアも例外なくシトレイユ王国の貴族であり男性聖機師として存在するだけであったために体力的にはいささか鍛錬不足は否めないのだ。 ダクマイア(こんなことだからキャイアにも敵わないんだ・・) こんな時に幼馴染のキャイアの事を思い出す。彼女は女性聖機師として早くからシトレイユ宮廷聖機師に推薦され、皇女付きの聖機師として仕官していた。 しかし自分は男性聖機師だから比べる物差しが違うと考え日ごろからキャイアを冷たくあしらい妬みや嫉妬心を誤魔化していたのだ。 ダグマイアは『情けない・・』と呟いた。 パーン! その時、乾いた銃声が聞こえた。 ダグマイア『銃声!?仲間か?』 今の状況で銃を使うのは我々の仲間以外にはいない。聖地の人間や学生達がそんな物を持ち歩くはずはないからだ。 ダグマイア『たしかこの上から聞こえたが・・・』 目の前の壁の上は確か聖地の裏手で公園施設があるところであった。 ババルン『ネイザイお前だったのか・・グァ・・・』 ズルル・・べしゃっ! ダグマイア『!?』 公園を見上げていたダグマイアの目の前に黒い塊が落ちてきてつぶれ、地面にひろがった。 ダグマイア『な・なんだこれは?父の声が聞こえたが・・』 恐る恐るダグマイアは黒い物体に近ずいた。 液体?いや・・何かゼリー状の物のようだ。 ダグマイア『ん?赤いガラス玉のようなものが・・』 片膝をついて手に取ってみるとそれは、少しひび割れているようだった。 チクッ! ダグマイア『いっ!・・』 迂闊にもひび割れが指先に刺さり出血した。 ダグマイア(ちっ!どうせ大した怪我でもない!) 思わず声が出るほどの痛みだったが虚勢をはるダグマイア・・ しかしガラス玉に自らの血が滴った瞬間、ガラス玉がうっすらと輝きを放ったことには全く気付かなかった。
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