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頭上に広がるは、月の仄かな光を反射するかのように輝く無数の星。
薄灰の雲がそれを時に覆うように流れ行くのを呆と見上げ見つめるそれは、居た。
冷たさを含んだ風に闇に溶けそうな程の同色の長い髪を揺らし遊ばせ、闇の中でも不気味な程に鮮明な赤色の着流しを着崩した、それ。
一度目にしてしまえば最後。
目を離せなくなくし惹き付ける妖しさと艶やかさ、そして危険さを孕んだその存在感。
着流しよりも鮮やかで苛烈で激しい赤を秘めた双眸は爛々と輝いており、気怠る気に胡座をかいたそれは、頬杖をついて天をその赤で見つめる。
色気と艶やかさ、そして鮮烈なまでの存在感は、人ではあり得ぬもの。
人ではないなら人の姿をしているそれは一体何なのかと問いたいだろうが、答えは直ぐに出るだろう。
それの額には、仄かな光を反射しててらりと輝く、対の角。
その対の角が、それの正体の答えだった。
人外なる風貌。
人外なる存在感。
故に正体は
鬼
なり。
今の日本の遥か昔から、時代の闇影に住み、人を喰らっては人と共に生きてきた多種多様な妖の一種。
それはその一種であった。
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