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脳裏に浮かんだ狐の妖は、人の世とも妖の世とも違う境目の位置にその身を置いていた。
妖は人と比べれば不老長寿と呼ばれる程に永遠の存在のようなものだが、二藍天狐のように千年もの遥かなる時を生きた妖は、大妖、とそう呼ばれる。
天合も五百は生きたが、狐に比べたらまだまだ足元に及ばない歳。
「あれはあれの生業をぎりぎりまで続けるんじゃね?」
これまた鼻で笑う天合。
歳の差は歴然としたものだが、天合の性格故に小馬鹿にした物言いを平気でする。
それに慣れている建春門院は横目で見やるだけで何も言わないが、銀の髪を風に遊ばせながら、古都の町並みの遥か先を見た。
「始まったさね」
始まった。
感じる。
古都の端で闇が現れ蠢き跳ねる気配を、肌をちりちり焼くような感覚で感じた。
それは天合も感じたようで、赤の相眸を建春門院同様古都の端に向けた。
妖とはその妖が望まなかったり大半の人には見えない存在だが、だが今古都の端に現れたものは違う。
古今東西の妖が一人残らず古都京都に集い、世界の終末を神と同様躍り歌い明かす為に、始まったのだ。
百鬼夜行
が。
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