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会社に着くと、伶奈が私を見て「後で話を聞くから」と、泣きそうな顔で言ったから、黙って頷いた。
始業間近だったし、今、伶奈に話してしまうと、もう仕事なんて出来やしない。
それを伶奈はわかってくれていた。
営業一課のフロアの入り口の前で、立ち止まる。また足が竦んで、身体が震えそうになっていた。
そこに私の後ろから
「おはよう。あれ?萩野さん、今日は眼鏡?」
課長が私に声をかける。
「おはようございます。」と笑顔を取り繕い、「ええ、まぁ。」と眼鏡に関して誤魔化すように、笑って曖昧な返事をした。
課長はジッと顔を見たけど、「大丈夫かな?」と、眉を下げ笑った。
深くは聞かない課長に、私は「はい。」と情けない笑顔を見せる。
「じゃあ、入ろう。」と言って課長がドアを開けた。
ドアが開き、視界に営業一課のフロアが飛び込んで来た。フロアの奥に・・
荻野 遥貴がファイル冊子を持って、立っているのが見えた。
先に来てたんだ。
やっぱり・・マンション、家に戻らなかった?
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