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「おはよう」と課長が皆に声をかけると、一斉に私と課長に視線が集まる。皆の視線を、荻野 遥貴の視線を逸らす為に、私は下を向く。
「おはようございます。」と、まるで独り言のように、小さな声で言って、自分のデスクに座った。
皆の顔も、荻野 遥貴が私を見たか、どんな顔してたか・・見れなかった。
PCを立ち上げ、デスクの引き出しから必要な物を取り出し、ガサガサしている私の背後に人の気配がした。
気づかないフリしていたら、座っている私の頭の上から
「おはよう。」
ほら、やっぱり・・ハスキーがかった低い声が聞こえた。
私は振り返らないで「おはようございます。」と、忙しいフリをした。
ドンと音がして、ビクっとする。
その音は私の背後から伸びた両手が、私のデスクに置かれたからだ。
荻野 遥貴は両手を私のデスクに置いて、私の背中を覆いかぶさるような姿勢になっている。
私の顔の真横に、荻野 遥貴の顔。
私の顔に至近距離に近づけたまま、彼は
「このファイル、開いて。」
と言って、PC画面のアイコンを指差した。
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