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私の耳元で話すから、彼の吐息と声で鼓膜を刺激され、心臓がバクバクする。
でも気づかれないように、平静を装い
「・・・荻野さん。」
「ん?」
「近いから、離れて下さい。」
「・・・。」
無視ですか・・。
特に重要でも無い、荻野 遥貴に指示されたファイルのアイコンをクリックして開いた。
「開きました。」
抑揚の無い声で、荻野 遥貴を一切見ずに言うと、彼は
「・・・一人にして悪かったな。」
ハスキーな声で、私に囁くように言った。
もう、ヤダ。
別に必要の無いファイル開けさせて、それが言いたかったワケ?
皆の前では、昨日はずっと外勤してた事を謝るフリして言って、本当は私の部屋から出て言った事を言う。
ズルい。
「・・いえ、一人でも大丈夫でした。」
「・・ふーん。」
私の後ろに居た温もりと、耳元の吐息は離れる。
「ねー、萩野さん。月報会、終わってから、時間空けててね。」
腕組みをして、眉を片方上げてるクセに、人の良さをアピールする満面の笑みを作って、私を見下ろす。
「・・・わかりました。」
本当にズルい。
ズルいから、嫌い。
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