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ヴィンランドの物産がなくても、科学を信仰しているというだけでシモン一族の取引先は増え、どんどん“西”の国々との交易で栄えていった。
元々、二代目J=シモンことジョイスがヴィンランドと交易を始めた理由は、科学を授けた“天空”や教会を敵に回していたからだった。
新しい科学とは言え、シモン一族が科学を信仰するようになると、異端者相手の取引でなくなるため、人々は安心してシモンズ商会の商品を買うようになった。
やがてシモン一族は“北”の寒い海から、段々温かく広い“西”へと活躍の場を移して行った。
この頃には蒼き狼と白き牝鹿の伝説は完全に忘れられていた。
仮に口にしようものなら、狂人扱いされ一族を追放する程、シモン一族はすっかり変わり果ててしまった。
それでも“南”へ旅立った三代目J=シモンことジャックの話は語り継がれ、彼の子孫が香辛料と財宝を持ち帰るという伝説だけは、しっかりと残された。
と言うのも十六世紀初頭の“西”では、まだまだ香辛料は貴重品で、それを親戚の伝手で簡単に入手できれば、莫大な利益をもたらすという現実的な理由だった。
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