ポルトガルの野望

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 時は少し遡る。  まだ“清教徒”(ピューリタン)がおらず、“北”の海にジャミーとユーリが生きていて、彼等の子供たちが素直に伝説に耳を傾けていた頃。  かつて“南”へ旅立った三代目J=シモンの息子、ジョセフは航海士トマの孫であるアンリから、驚くべき報告を受けていた。 「ポルトガルがキルアとソファラを占領したよ!」 「何だと!?」  正直、ジョセフはポルトガルを甘く見ていた。  ムスリム(イスラム教徒)からも信頼が厚いジョセフは、自分たちの力で“西”の船団を諦めさせる事ができたと思っていた。  だからポルトガルから再び船団が来ても、案の定カレクトとの取引は失敗している。  そこでカレクトの属国とされているコチンとポルトガルが手を組んだ時、ジョセフは警戒しながらも、内心これで納得するだろうと高をくくっていた。  アラビヤ海の遥か西にある国々をポルトガルが占領する事は、ジョセフの予想を越えた事態だった。 「やはり“天空”が力を貸したとしか思えないよ。そうでなきゃ、文明が遅れた“西”が、世界中の文化が集まる“南”に勝てる訳がないもの。」
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