ポルトガルの野望

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 実は。  ポルトガルは古くからイスラム勢力に支配されており、そのおかげで航海術や測量技術さらに天文学など、アラビヤの進んだ文明が長く息づいていた。  かつて『新・聖マルコ号』がカレクトの軍艦に大敗を喫したのは、戦闘用の戦艦ではなく交易を目的とした商船だった事と、相手が多すぎたからだ。  仮に戦闘に特化したポルトガルの軍艦が、軽装の“南”の軍艦と同じ条件で戦ったら、間違いなくポルトガルの軍艦が勝てるレベルにまで、百年の間に“西”の火器は発達していた。  その事を見抜けなかった自分の甘さをジョセフは悔やんだ。 「どうしたらいい? 次は間違いなくインヂアを奴らは狙ってくるぞ。どうすれば“西”から守れる?」  悩むジョセフにアンリはパーン(キンマの葉にビンロウジュの実等を巻いた物)を差し出した。 「悩んだって仕方ないよ。とりあえず、気分転換にこれでも噛んだら?」 「……そうだな。」  ジョセフはパーンを噛み締め、爽やかな香料の香りを喉の奥で味わってから、小さな壺に赤い唾を吐いた。
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