ポルトガルの野望

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 そこでジョセフは一計を案じた。  カレクトの王族を説得し、シモンズ商会の商館を飾り立て、カレクトの国賓として後にポルトガル初代インド総督となる司令官フランシスコ=デ=アルメイダを招待した。 「度重なる戦いでお疲れでしょう。」  主としてジョセフがアルメイダに労いの言葉をかけたが、アルメイダはニコリともせず答えた。 「戦いこそ我が人生。疲れなぞ無い。」  笑顔のジョセフを払いのけ、アルメイダは黙って上座に腰を下ろした。 「どうせ香辛料尽くしの飲食で接待し、便宜を計って貰おうという腹積もりであろう。貴様等、土人の知恵などその程度の浅はかなものだ。」  そう言ってジョセフを睨み付けるアルメイダに、ジョセフは歩み寄ってアルメイダの胸倉を掴み上げた。 「誰が便宜を計れと言った? 違うね。これから先も“南”で商売を続けたいなら、先輩として正しいやり方を教えてやろうとしているんだ。それこそ、あんたが死んで、その後継ぎが来ても困らないやり方をな。」 「そんなやり方は必要無い。我がポルトガルの力を持ってすれば不可能なぞ無い。」  アルメイダはジョセフから離れ、胸を張って睨み返した。
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