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「我が名はジャック=シモン。カレクト王ビーシュマの寵愛を受けし蒼き狼J=シモンと、その妻ジョイスの息子でございます。」
カレクトの王族達は度肝を抜かれた。
かつて善政を行った名君ビーシュマの名前だけでなく、彼から語り継がれた名前J=シモンを老人が口にしたからだ。
事情を知らない“西”の航海士達は、ようやく商館を自分達の物にできると、ほくそ笑んでいた。
「ジャックよ。早く商館の結界を解くがよい。」
ここぞとばかりに“西”の航海士のリーダー、ヴァスコ=ダ=ガマが老人に命じたが、老人は毅然と断った。
「元々、この商館は我が父J=シモンに、カレクト王から授けられし物。間違っても“西”の国へ渡してはならぬと、両親から強く言い渡されております。」
刀を鞘から抜こうとする若者を制し、老人は腰に穿いた“太陽の刀”を抜き、天に向かって掲げた。
「カレクト王ビーシュマよ。我の誕生を祝って贈りし館を今こそ返したまえ。我は蒼き狼J=シモンと、白き牝鹿ジョイスの血を受けた息子ジャック=シモンなり。」
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