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空で何かが弾ける音が響くと、ジャックは両膝を地面についた。
「我が息子ジョセフよ。約束は果たされた。これより先は、そなたがJ=シモンとなり、“南”の海で存分に手腕を振るうがよい。」
「親父……。」
口から血を吐きながら、息子の腕の中で笑顔をたたえ、ジャックはその生涯を閉じた。
「今のうちに商館を占拠しろ!」
“西”の礼儀知らず共は商館へなだれ込もうとしたが、ことごとく結界に押し返された。
「わかってねえな。」
年老いた父ジャックを地面に横たえてから、若いジョセフは“西”の航海士達に言い渡した。
「この館には、蒼き狼と白き牝鹿の血を引く者しか、最初に入れないんだよ。親父はその血を最も強く受け継いでいる。だから、あんた達が“歴史書”に従ってインヂアにたどり着くまで、辛抱強く待っていたんだ。」
「ならば、そなたを我等の部下にしてやろう!」
鼻息荒く言いつける“西”の航海士に、ジョセフは鼻で笑って答えた。
「『部下にしてください』の間違いだろう?」
怒りに我を忘れた“西”の航海士達を軽くのしてから、ジョセフは父親の亡骸を抱え、商館へ足を運んだ。
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