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すると結界は自然とジョセフ親子を迎え入れ、ますますカレクトの王族達を驚かせた。
その後。
礼儀知らずな“西”の航海士達はカレクトと散々揉めた末、季節風に逆らって故郷へと帰って行った。
一方、“南”の礼儀をわきまえたジョセフと、彼の教育係を勤めた航海士アブーは、カレクトの人々に歓迎された。
そして蒼き狼と白き牝鹿の息子ジャックは手厚く葬られた。
ジョセフはジャックから受け継いだ物語を守護妖精(ガーダナ・シー)に語らせ、自らは“太陽の刀”と“ジョイスの指輪”を身に付け“南”の海で商売を始めた。
「じゃあ、俺は“東”の帝国へ行くぜ。」
教育係だったアブーはジョセフの成功を見届けてからそう告げた。
「ありがとう。アブー先生。今度はあんたの夢を叶えてくれ。」
「ああ。ジョセフなら大丈夫さ。お互い、上手くやろうぜ。」
二人は師弟というだけでなく、兄弟か親友のような間柄だった。それだけに別れが辛い筈なのに、お互い笑顔を絶やさなかった。
アブーが“東”へ旅立っても、ジョセフは“南”の礼儀を忘れず、常に“南”を支配しようとする“西”の連中相手に互角に渡り合った。
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