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抜け目ないトマの老獪さと、謙虚で用心深いアベバの注意力は、守護妖精も到底かなわないと思っている。
それらを受け継いだジョセフの代わりは今のところシモン一族にいない。
「差し出がましい口を挟んで悪かった。」
守護妖精は素直に謝罪した。
「いいさ。その代わり、俺の子供たちに“北”の海にいる従兄弟たちの事を、語り継いで欲しい。親父がじいさんの約束を守ったように、俺の夢も子供たちが叶えてくれるようにな。」
ジョセフは仕事を片付けると、守護妖精と一緒に子供たちと遊び始めた。
かつて自分が遊んでやった子供が、今は立派な主人に成長したかと思うと、守護妖精はこの一族についてきた事を幸せに感じた。
立派な祖先たちの物語を子供たちに語り継ぎ、外敵から一族を守るために戦い、育て上げた子供たちの相談に乗り、そのまた子供たちの遊び相手になる。
かつて愛した女主人の子孫たちに仕える事は、守護妖精にとって生き甲斐となっていた。
しかし。
後にこの生き甲斐が、守護妖精を苦しめる事になる……。
(了)
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