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今日は終業式。
そして明日からは、子どもたちが待ちに待っていた冬休みだ。
行事のある日は、全園児制服登園が義務付けられている。
子どもたちに人気の特撮ヒーロー・『時空戦隊サイレンジャー』のワッペンが付いたコートを脱ぎ、優心君は身支度を終えた。
「他のお友達、まだ来ないのかな?
祐輔君や創君と一緒に、サイレンジャーごっこしようって約束してたんだ。」
そう言って優心君は、絵本コーナーへ行き1冊の本を持ってくる。
「笑美先生、みんなが来るまで、僕に絵本を読んで。」
彼に手渡された絵本は、『きつねのよめいり』と書かれた民話の絵本。
幼児向けに書かれた創作絵本のため、だいぶ内容に尾鰭が付いたものとはなっているが、この本の題材となった『狐の嫁入り』は、各地で民話として確かに伝えられてきたものだ。
子、孫、曾孫へと、世代を超えて語り継がれてきたこの民話。
私も幼い頃、祖父からこの話を聞いた事があった。
―――天気雨の日に、行列となった光の群れが1つ。
それは、村一番の可愛いキツネが結婚式に向かう様子でした。―――
この絵本のあらすじは、可愛いキツネの女の子がお嫁にいく所から始まる。
キツネの女の子は、大好きなキツネの男の子のお嫁さんになる事をとても楽しみにしていた。
しかし許嫁であるキツネの男の子は、実はタヌキが化けていた姿。
結婚式の日、慌てたタヌキは尻尾だけキツネになりそびれてしまった。
それを他のキツネたちに見つかってしまい、タヌキは村を追い出されてしまう。
許嫁が村から追い出され、お嫁に行くはずだったキツネの女の子は悲しみ、三日三晩泣き続けた。
しかし、そんな彼女の元に白い毛色の狐の神様がやってきて、「どうしても結婚したければ、七色の虹の脚を見付けてそこで結婚しなさい」と告げて去っていく。
神様のお告げを聞いた彼女は、悲しくて泣きながらも『虹の脚』を捜す旅に出る事を決心する。
そして、天気雨が降った後の泉のほとりで、ようやく『虹の脚』を見付けるのだ。
『虹の脚』を見つけたキツネの女の子は、泉に向かって祈りを捧げた。
すると背後から、大好きだった許嫁が完全なキツネの姿で現れる。
そして2匹のキツネは白狐の神様に見守られながら、『虹の脚』の下で2人だけの結婚式を挙げたのでした。
めでたし、めでたし。
・・・と、いうもの。
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