二章

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「ねぇ、ソール。迷ってない?」 ぎくり。 「そ、そんなことないぞ。まだそんなに時間も経ってないし、きっとすぐにでも着く……」 「昨日、そう言って森の中で一晩野宿したんだけど?」 「あ、あれは……その……」 うん。絶賛遭難中だ、俺達。 だけども、それを認めたら負けた気がするので、俺は執念深く前へ進む。 森の中というのは、さしてかわらないように見えていて、遭難するのも頷ける。 「さすがに、今日こそ森のローレライに会ってみたいけどね」 「てか、それが森に来た目的だろ。町長さんに、依頼料前払いされちゃってるし」 もちろん、町長さんに頼まれずとも、森には用があって立ち寄りはするんだが……。 「ん?アミル、あそこ」 「何?……わ、でっかいね」 前方に、湖を見つけた。アミルの言うとおり、かなり大きい。俺達は早速湖に近付いた。 湖はその大きさにもかかわらず、一片の濁りもなく、青く透明に澄んでいた。 「森のローレライって、ここに出るのかな?」 「可能性は高いかもな。正体が分かったら町長さんに伝えないといけないな」 「そー《ヒュンッ》……え?」 アミルが何か言おうとしたのと、俺の目の前を刃が横切って行ったのはほぼ同時だった。 「だ、誰だっ!?」 周りの気配を探りながら叫ぶと、俺達から少し離れた場所から何かが現れた。 「誰だはオレの台詞だ。またこの近くに住む奴か?噂を当てに来るのもいい加減にしろ」 多少の怒りを含んだ声の主は、ずんずんと俺達の方に近付いて来る。 「え、あれ?子供……?」 アミルが戸惑っていたが、それは無理もないと俺も思った。 声の主は、見るからに俺達より年下の少年だったからだ。黒いマントと帽子が、異様な雰囲気を漂わせてはいるが。 「見た目はお前らより下かもしれないが、オレはお前らの十倍くらいは生きてるぞ」 「はあ?」 何を訳の分からないことを……。 「……ルトルム君?何をしてるんですか?」 「あ……。アクア?」 奥の方の茂みから、また人が現れた。俺とアミルはそっちを見て、言葉を失った。 白い着物に羽衣を身に纏っていて、まさに天女と呼んで差し障りのない女性だった。何か着崩れてるけど。 「え。アクア、どうして今ここに」 「こちらが騒がしい気がしましたので……。ええと……そこのお二方、私の家に来ます……?」 いきなり出てきた人のいきなりな発言に、俺とアミルは思わず頷いていた。
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