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ついて行った先には、大きな木の中がくりぬいて作られた家があった。
「私は……イメルガ・アクアです。一族から離れて、ここに一人で住んでいます……」
中に通された俺達は、真っ先に揺り椅子に座った彼女から自己紹介を受けていた。
さっきの少年は、奥の部屋でお茶を淹れてくれているらしい。
「えっと俺は、ソール・イーグニスです」
「私はアミル・フォルティアです」
「ソール君に……アミルさん、ですね……」
ぎぃぎぃと揺り椅子を鳴らしながら、イメルガさんは俺達の名前を反芻した。
「あの、イメルガさん。もしかしてですけど、あなたは勇者側近の……水の一族ですか?」
アミルが唐突にそんなことを言い出した。水の一族は、確かにアクアって家名らしいが、まさかこの人がそのアクア家な訳はないだろう。
「……私は……」
「「……」」
「……」
「「……」」
「……すぅ」
寝始めた!?
「えっ、あの、イメルガさん?」
すうすうと眠るイメルガさんに、俺達は戸惑うことしかできなかった。
困り果てていると、奥の部屋からさっきの少年がお茶をトレーにのせて持って現れた。
「……あー、寝ちゃったか」
少年は慣れているようだ。トレーをテーブルに置き、イメルガさんの肩を揺する。
「アクア、アクア」
「ん……んぅ……。あぁ、ごめんなさい……眠ってまし、た……すぅ」
「アクアー……これは無理だな。ええと、なんならオレが代わりに話を聞くが……」
苦笑した少年が俺達の方を向く。俺は少し身体を強ばらせ、アミルは剣の柄に手をかける。
「おいおい、そう固くならないでくれよ」
すごく無理な話だよな。だってさっき、俺の目の前に刃を走らせた張本人だぞ、この少年。
「おっと、そういえばまだ名乗ってなかったな。オレはルトルム・アステラ。地の一族だ」
「え?アステラ……って、勇者側近の一族じゃない」
「その通り!だから実年齢はお前らよりもずっと上だ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて笑う少年、いやルトルム。
アステラっていう地の一族は、俺達の十年を一年と感じるほどに長命な一族だ。だからまあ、ルトルムも多分百いくつくらいなんだろう。ものすごくしっくりこないけどな。
「あぁそれと、アクアは確かに勇者側近の一族だ。水の、な」
そしてまさかのイメルガさんも勇者側近一族だった。近場にいるもんだな。
「さて、あと何か聞きたいことはあるか?」
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