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どっかとソファーに腰掛けたルトルムは、どっからどう見ても少年だ……。
「聞きたいことというか、私は本当にあなたがアステラ一族なのか確かめておきたい」
「ほぅ。……まあいいが」
ルトルムはソファーから飛び降り、傍にあった観葉植物の植木鉢を叩く。
「よく見てろよ」
言うが早いか、ルトルムは植木鉢から一握りの土を取る。
「【プラスティコス】」
よく分からない言葉を唱えた次の瞬間、ルトルムの手の中には土ではなく、ナイフが収まっていた。
驚きのあまり、俺はアミルの方を見たが、アミルはさも当然だとでも言う風にルトルムを見ていた。
「もう少し凝った物はできないの?」
「やれやれ……疑ってかかる人か。別にいいが、何がいい?」
呆れたように苦笑したルトルムは、再び植木鉢から土を取る。
「そうね……じゃあ、そこのと同じティーカップ。できる?」
テーブルの上、トレーに置かれたティーカップを指差して、アミルはルトルムを見る。
土を握ったルトルムの手は、テーブルの上に差し出された。
「……【プラスティコス】」
さっきよりも少しだけ間を開けて、さっきと同じ言葉を唱えた。すると、カタンという軽い音をさせて、テーブルの上にティーカップが現れた。
俺はまたアミルを見た。アミルは一度頷いて、音のない静かな拍手をする。
「確かにあなたはアステラ一族のようね」
「最初からそう言っているがな」
二人が少し言葉を交わしている間に、俺はテーブルに現れたティーカップとトレーにのったティーカップをまじまじと見て、触って比べていた。
「すげぇ、同じだ……」
見た目に装飾、色、そして手触り、すべてが同じだった。
俺の呟きが聞こえたらしく、ルトルムが胸を反らせて笑う。
「当然だ。オレは秀才だからな。だが、妹はもっとすごいぞ」
「妹?」
「ああ」
俺はルトルムの表情を見て、直感的にまずいことを聞いたことが分かった。
「オレの妹はすごいぞ。オレみたいに、呪文を必要としない。土を一握り取って、作りたい物を思うだけですぐさまできるんだ。あれはもうオレ達アステラ一族でも稀な存在…天才と言っても過言じゃないな。そもそも妹は――」
そこからはもう、マシンガントークと言っても差し支えないほどの喋りっぷりだった。
妹がいかに素晴らしい天才か、イメルガさんが起きるまでいやというほど話された。
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