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「あ。なぁアミル」
「……何よ」
シャワーを浴びると言って、奥の部屋に行ったイメルガさんを見送った俺は、窓の傍でブツブツと何かを呟いているアミルに声をかける。なんだか知らないが、機嫌が悪いみたいだ。
「町長さんに、説明するか?」
それは、さっきふと思い出した事。町長さんからは多額の前払金をもらっていて、あまり無下にはできない。けれど、イメルガさんの事をそうやすやすと話していいものなのだろうか。
そうして判断に困ったので、俺はアミルに聞いてみた。アミルもアミルで忘れていたのだろう、ハッと気づいたように「あ」と声をあげ、困ったように額に手を当てる。
「そうね、どうしようかしら。私はあまり言いたくないけれど」
「でも、なんか悪い気がするんだよな」
「それはそうだけど、特に被害は大きくならなさそうだし……」
二人して「うーん」と唸る。ここで決めておかないと、この先どっちに進むかも決められない。
「何をしているんだ?」
答えの出ない問題に頭を捻っていると、何かが一段落したのであろうルトルムに訝しげな顔をされた。
ある意味当事者でもあるので、俺はアミルに了承を得て、町長さんの事を話す。ルトルムは微妙な顔で俺の話を聞いていたが、最後の方では少しニヤけていたのが見えて、俺は少し首を傾げた。
「――で、どうしようか。と」
「それならいい案がある」
早いな。
「オレがその町の町長の所に向かうとしよう」
「えっ……いいのか?」
俺がルトルムにそう聞けば、首を傾げられた。
「それが一番手っ取り早いだろう?そっちは早く先に進めるし、こっちは水を汚されなくて済むし。悪いことは何もないだろう?」
「それはそうだけど、町の方はそれで納得するかしら」
「さあな。だが、オレ達には関係のないことだろう。死者が出た訳でもない、こちらに襲われている訳でもない、奴らの自業自得だ」
確かにルトルムの言うことはもっともだ。少なくとも俺は納得した。そう思って小さく頷いていると、アミルに「単純すぎるわよ」と怒られてしまった。
「けれど、あまり悠長にしていられないのも事実ね。できれば先を急ぎたいところだし、あなたに任せることにするわ」
え、あ。結局ルトルムに任せるのか。
じゃあなんで俺怒られたの。
「そうか、任された」
ルトルムは二度頷いて、俺達に「そういえば」と言葉を続けた。
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