二章

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「ルトルム君」 「ん。アクア、あがったか」 イメルガさんが、湯気を纏うようにして、俺達の前にやってきた。 「ソール君とアミルさんは、今夜泊まって行かれますか?」 「というか逆に、泊まって行かない訳がないだろう?」 質問をイメルガさんに投げかけられた……かと思えば、ルトルムに決定事項扱いをされていた。 イメルガさんは俺達の話を聞かないまま「そうですよね。当然泊まって行かれますよね」などと言いながら、さっさと奥へと消えて行った。 「……泊まって行くんだろう?普通、こんな夜更けにわざわざ野宿しに出はしない」 「いや……うん。まぁ頼めるなら頼みたかったが、うん……」 なんか腑に落ちない承諾をされてて、ちょっともやもやする。 アミルも同感のようで、首を傾げて苦笑いをしていた。 イメルガさんの計らいで、俺はルトルムの、アミルはイメルガさんの部屋で、一晩泊めてもらうことになった。 アミルが風呂に入っている間、俺は用意してもらった寝床で荷物整理をしていた。 「…………」 《ガサガサ》 「…………」 《ゴソゴソ》 「…………」 《ガサガサ……コトンッ》 「……えっと、何か用か?」 真正面で仁王立ちをして俺を見るルトルムに、俺は手を止めて少し引き気味に聞いてみる。 「用が無ければいけないか?」 「え、ないのか?」 てっきり、あるからずっと俺を見ているのかと思った。って、待て待て。じゃあ何故見ている。 「いや、あるが」 あるのかよ。さっきまでの数分間と今の応答、完全に時間の無駄だっただろ。 そう言ったところで、ルトルムは意に介さないだろうから、俺は小さな溜め息を吐くだけに留めておいた。 「それで、何の用だ?」 「お前ら、イーグニスとフォルティアだと言っただろう?」 ルトルムはどこか楽しそうに、言葉尻を弾ませながらそう聞いてきた。 「そう、だけど」 「……ということは、だ。また魔王が動き出したんだろう?なあ、そうだろう?」 詰め寄ってくるルトルムに、なんとなく奇妙な感覚を覚えつつも、俺は「あぁ、そうだよ」と軽く頷く。 俺の返答を聞いたルトルムは、少し興奮気味に「そうだろうそうだろう……!」と言って、口の端を歪ませた。 魔王が動き出したことが、そんなに嬉しいことなのかと聞こうとしたけれど、アミルが風呂から上がったことを言いに来たので、俺は聞くことができなかった。
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