一章

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「――ということがあり、この世界の四大元素を司る一族…… 風の一族『ウェントス』。 水の一族『アクア』。 火の一族『イーグニス』。 地の一族『アステラ』。 そして、勇者一族『フォルティア』。 これらの者達は、勇者とその従者達として、長らく語り継がれている訳だ。ソール。分からないところはあったか?」 「ないでーす」 「よろしい。では、本日はここまで」 ありがとうございました。と上っ面だけの言葉を言い、俺は先生……もとい親戚の人に会釈する。 先生が部屋から出て行って俺一人になったことを確認してから、少し間を置いて部屋を飛び出した。 「ソール!」 庭では、幼なじみのアミルが俺に向かって手を振っている。 アミル・フォルティア。俺と同じ十七歳で、黄色地に橙チェックのケープと赤髪のポニーテールが特徴的だ。 さっき先生が言っていたように、勇者一族の末裔だ。俺は火の一族の末裔。つまり、俺達は勇者とその従者……と言っても過言ではないのだ。 「アミル。今更だが、俺と一緒に遊んでていいものなのか?剣の練習とか……――」 《ガッ》 しなくていいのか?と、言い終わらないうちに、俺の足元の地面が突然削れた。 「鍛練もいいけど、息抜きだって必要でしょ?」 いつの間にか鞘から剣を抜いて笑うアミルに、俺はサッと血の気が引いた。 アミルは剣術に長けている。さすが勇者一族と言うべきか。特に、斬撃を飛ばすということが得意だ。今し方俺の足元の地面を削ったのも、アミルの斬撃だ。 「これ、結構怖いんだぞ」 小さく不平を言えば、アミルは「大丈夫」と言う。 「ちゃんと当たらない所を狙ってるから」 「……さすが勇者」 皮肉のつもりで言ったが、アミルはただ笑っただけだった。若干、顔が引きつっているように見えるが、それを指摘したら斬撃が飛んできそうだったから黙っておく。 「まあいいじゃない。この辺りじゃ、同年代がソールくらいしかいないんだから。家族は……いないし」 「そうだな……」 アミルは幼い頃に、両親及び親族を事故で亡くした。 しかも俺やアミルが住むこの辺りは、勇者一族と火の一族の二つの一族のみが住む村しかなく、アミルくらいの年の子は俺くらいしか居ない。 だからと言うべきだろうか。俺達は小さい頃からよく一緒にいる。多分、これからも。 どことなく陰鬱とした空気が漂う中、俺達の方に誰かが寄って来た。
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