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「ところで、そこの二人は自己紹介とかないのかい?」
遠回しに自己紹介しろと言われたような気分だ。いやするけどさ、自己紹介。タイミングがなかっただけだし。
「私はアミル・フォルティア」
「俺はソール・イーグニス」
「フォルティアにイーグニス……光と火の一族か。光の一族が動き出したということは、久々に魔王軍が動き出したようだね」
久々。となると、ラクルムはおおよそ百年ほど生きているらしいから、そこから推測して百年内には似たようなことがあったと。
頭の中でごちゃごちゃと考えていると、アミルが呆れたように俺に言う。
「前回魔王軍が動き出したのは、約八十二年前よ」
これくらい常識でしょう。なんて言われたら、何も言い返せない。イメルガさんもラクルムも微妙な雰囲気で俺を見る。
数分ほどいたたまれない空気に包まれた後、なんとラクルムに助け舟を出された。
「ところで、どこに向かっているんだい?まさか、フィーデスとは……言わないよね?」
「いや、フィーデスだけど」
「…………そう、かい」
微妙に嫌そうな顔をしたラクルムに、俺達は首を傾げたが、「なんでもないよ」で押し切られた。
「別にフィーデスはいいのだけれど、長くてあと三日は歩くと思うよ?」
そして告げられた現実に、俺はちょっと気が滅入る。長時間歩くのは、まあ慣れてない訳じゃない……けど疲れるものは疲れるんだよ。アミルもイメルガさんも、ラクルムだって同じだろうけども!
それからフィーデスに到着したのは、二日とちょっと経った頃だった。
「わあ!すごい!」
「大きな街ですね……!」
街に入るやいなや、アミルとイメルガさんは二人してはしゃいでいた。いやいや二人とも、これから宿を探さなきゃいけないんだけど。
「あ、イーグニス。宿ならあそこを推奨するよ。値段の割にいいところなんだ」
「そ、か。じゃあ、そこにしよう。アミル、イメルガさん、置いてくよー」
ラクルムを先頭に、俺達はラクルムおすすめの宿屋に向かう。
……あれ、おすすめって、ラクルムはここに来たことあるのか。ああ、百年も生きてればそりゃ行くか。
表通りを少し外れたところに、その宿はあった。
フィーデスに着いてから、心なしかラクルムの足取りが重いように見えるのは、俺の勘違いとかじゃないはず。
「……失礼するよ」
ガラリと引き戸を開けて、ラクルムは中に入る。俺達もそれに倣う。
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