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「アミル様、族長がお呼びです」
きっとイーグニス家の人……つまりは俺の親戚なんだろうが、誰だかまったく分からない。
「またなの?」
アミルは、勇者一族の生き残りで……だからアミルは俺達イーグニス家と一緒に暮らしているんだが……。
フォルティア家の血を唯一持つアミルは、よく族長に呼ばれていた。一族同士のいざこざでもあるんだろうなぁと、俺は一人納得している。
「……という訳ですので」
「分かったわ」
って、いつの間にか話が終わってるし。なんだったんだろう、アミルに聞いとけばいいか。
呑気に空を眺めていたら、アミルに首根っこを掴まれてずるずると……え、えっ!?
「あっ、アミル!?」
「何?……ソール、聞いてなかったのね」
「……あ……はは」
仰るとおりです。
「族長が私に話があるらしいのよ。しかも、ソールと一緒に来いって連絡付きでね」
「え?」
俺にも話?族長が?
結局、アミルに引きずられたまま族長の部屋まで来てしまった。さすがに族長に会う前には解放され、身だしなみを整えさせられたけれども。
「失礼します」
扉を開けて入るアミルに続いて、俺も部屋の中に入る。
背後にある出入り口が、大きな音を立てて閉じた。
「族長が私に何かご用でしょうか?」
「左様。我がイーグニス家が代々仕えてきた、フォルティア家……そのただ一人の末裔に、こんなことを頼むのは少々厳しいのかもしれぬが……」
「……なんでしょうか?」
空気にも内容にもついて行けない俺は、一人ぽかんとアミルを見つめていた。
「こんな時期に、魔王が目覚めたらしいのだ。本来ならば、適齢のフォルティア一族が行くべきなのだが」
「構いません。私、アミル・フォルティアは、勇者一族ただ一人の末裔として、その使命を全うしたいと思っております」
「……すまぬな」
えっと……つまり、どういうこと?
「では、アミル・フォルティアよ。我がイーグニス家のソール・イーグニスを連れ、魔王を再び封印してくるのだ」
「はい!」
ぐいっと腕を引っ張られ、半ば引きずられながら俺達退室した。俺が呼ばれた意味が欠片も分からない。
「ソール。今の話、分かった?」
「いや、全然」
胸を張ってそう言えば、「そうよね」と溜め息を吐かれた。
「つまりね、私とソールで魔王を封印しに行くの」
「アミルと俺で?」
「私とソールで」
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