一章

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「アミル様、族長がお呼びです」 きっとイーグニス家の人……つまりは俺の親戚なんだろうが、誰だかまったく分からない。 「またなの?」 アミルは、勇者一族の生き残りで……だからアミルは俺達イーグニス家と一緒に暮らしているんだが……。 フォルティア家の血を唯一持つアミルは、よく族長に呼ばれていた。一族同士のいざこざでもあるんだろうなぁと、俺は一人納得している。 「……という訳ですので」 「分かったわ」 って、いつの間にか話が終わってるし。なんだったんだろう、アミルに聞いとけばいいか。 呑気に空を眺めていたら、アミルに首根っこを掴まれてずるずると……え、えっ!? 「あっ、アミル!?」 「何?……ソール、聞いてなかったのね」 「……あ……はは」 仰るとおりです。 「族長が私に話があるらしいのよ。しかも、ソールと一緒に来いって連絡付きでね」 「え?」 俺にも話?族長が? 結局、アミルに引きずられたまま族長の部屋まで来てしまった。さすがに族長に会う前には解放され、身だしなみを整えさせられたけれども。 「失礼します」 扉を開けて入るアミルに続いて、俺も部屋の中に入る。 背後にある出入り口が、大きな音を立てて閉じた。 「族長が私に何かご用でしょうか?」 「左様。我がイーグニス家が代々仕えてきた、フォルティア家……そのただ一人の末裔に、こんなことを頼むのは少々厳しいのかもしれぬが……」 「……なんでしょうか?」 空気にも内容にもついて行けない俺は、一人ぽかんとアミルを見つめていた。 「こんな時期に、魔王が目覚めたらしいのだ。本来ならば、適齢のフォルティア一族が行くべきなのだが」 「構いません。私、アミル・フォルティアは、勇者一族ただ一人の末裔として、その使命を全うしたいと思っております」 「……すまぬな」 えっと……つまり、どういうこと? 「では、アミル・フォルティアよ。我がイーグニス家のソール・イーグニスを連れ、魔王を再び封印してくるのだ」 「はい!」 ぐいっと腕を引っ張られ、半ば引きずられながら俺達退室した。俺が呼ばれた意味が欠片も分からない。 「ソール。今の話、分かった?」 「いや、全然」 胸を張ってそう言えば、「そうよね」と溜め息を吐かれた。 「つまりね、私とソールで魔王を封印しに行くの」 「アミルと俺で?」 「私とソールで」
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