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「……俺、いる……?」
素朴な疑問を投げかければ、目を逸らされた。目を合わせようとしたら、頭を叩かれた。
「痛い……」
「とにかく!荷物まとめて来なさい。準備が出来たら玄関に集合よ」
目の前に指を突き出され、俺は反射的に頷く。アミルはそんな俺を見て納得したのか、自室へと歩いて行った。俺も自室へ、アミルと正反対の方向へと歩く。
「荷物をまとめる、と言われてもなぁ……」
よくよく考えれば、俺に必要な物って、最低限の物以外は武器の短剣だけなんだよな。
短剣を身に付けて、荷物を持って、玄関へと行く。アミルは俺よりも早くそこにいた。
「早くね?」
「ソールが遅いのよ」
アミルの荷物も、最低限の物と、いつも使っている長剣のみだった。
「さっ、行くわよ」
どこか吹っ切ったような顔でそう言われれば、俺は頷くしかないわけで……。
こうして、俺達勇者一行の旅は始まった。
「アミル、魔物!」
「そりゃ魔物くらいいるわよ。外だもの」
遠目に村も見えなくなった頃には、アミルはかなり明るい表情で……魔物を切り捨てて行く。
「それで、まずどこに行けばいいの?」
「えーと、あそこから一番近い町は……アミル後ろ!」
アミルの背後に、中型の魔物が武器を振りかぶっているのが見えた。慌てて叫ぶが、間に合わない……!
「これに気付かないくらい鈍いと思われてるの?」
中型の魔物が、武器を振り下ろす前に、倒れた。いつ攻撃したんだ。
「で、どこ?」
……アミルの際限ない強さに、むしろ呆れ気味な俺。地図を見て書かれていた名前をざっと読み上げる。
「オリエス」
「オリエス、は……確か東の方の町ね」
何故分かる。
アミルに疑問の視線を送れば、通じたのかちょっと笑われた。
「地図は何度も読み込んだもの。魔王城付近までならだいたい分かるわよ」
ならどうして俺に聞いた。
俺が小さく溜め息を吐けば、アミルは楽しそうに笑う。
とりあえず俺も地図を頭に入れとくくらいはしようと、広げた地図を眺める。
地図を持ちながら歩く俺と、魔物を切り捨てて歩くアミル。
魔物よりも俺達の方が、なんか危ない気がしてきた。
そうして歩いては野宿して、数日かけてオリエスへと向かう。
着いたのは、俺達が歩き始めて五日目の夕方だった。
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