一章

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「……俺、いる……?」 素朴な疑問を投げかければ、目を逸らされた。目を合わせようとしたら、頭を叩かれた。 「痛い……」 「とにかく!荷物まとめて来なさい。準備が出来たら玄関に集合よ」 目の前に指を突き出され、俺は反射的に頷く。アミルはそんな俺を見て納得したのか、自室へと歩いて行った。俺も自室へ、アミルと正反対の方向へと歩く。 「荷物をまとめる、と言われてもなぁ……」 よくよく考えれば、俺に必要な物って、最低限の物以外は武器の短剣だけなんだよな。 短剣を身に付けて、荷物を持って、玄関へと行く。アミルは俺よりも早くそこにいた。 「早くね?」 「ソールが遅いのよ」 アミルの荷物も、最低限の物と、いつも使っている長剣のみだった。 「さっ、行くわよ」 どこか吹っ切ったような顔でそう言われれば、俺は頷くしかないわけで……。 こうして、俺達勇者一行の旅は始まった。 「アミル、魔物!」 「そりゃ魔物くらいいるわよ。外だもの」 遠目に村も見えなくなった頃には、アミルはかなり明るい表情で……魔物を切り捨てて行く。 「それで、まずどこに行けばいいの?」 「えーと、あそこから一番近い町は……アミル後ろ!」 アミルの背後に、中型の魔物が武器を振りかぶっているのが見えた。慌てて叫ぶが、間に合わない……! 「これに気付かないくらい鈍いと思われてるの?」 中型の魔物が、武器を振り下ろす前に、倒れた。いつ攻撃したんだ。 「で、どこ?」 ……アミルの際限ない強さに、むしろ呆れ気味な俺。地図を見て書かれていた名前をざっと読み上げる。 「オリエス」 「オリエス、は……確か東の方の町ね」 何故分かる。 アミルに疑問の視線を送れば、通じたのかちょっと笑われた。 「地図は何度も読み込んだもの。魔王城付近までならだいたい分かるわよ」 ならどうして俺に聞いた。 俺が小さく溜め息を吐けば、アミルは楽しそうに笑う。 とりあえず俺も地図を頭に入れとくくらいはしようと、広げた地図を眺める。 地図を持ちながら歩く俺と、魔物を切り捨てて歩くアミル。 魔物よりも俺達の方が、なんか危ない気がしてきた。 そうして歩いては野宿して、数日かけてオリエスへと向かう。 着いたのは、俺達が歩き始めて五日目の夕方だった。
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