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「やっと着いた……」
「まずは宿を探さなきゃね」
そう言って辺りを見渡すアミルと俺に、遠くから人が来て、いきなり話しかけてきた。
「あの、旅のお方ですよね?」
「え、えぇ……そうですけど」
アミルの返答を聞いたその人は、目を輝かせてアミルの手を掴んだ。
「ぜひ、わたしの家へ来てください!」
「えっ?あの……私達、宿を……」
「お願いです。どうかわたしの話を聞いていただきたい!」
一心不乱にアミルの手を引くその人と、勢いに戸惑うアミル。俺はアミルに耳打ちをする。
「アミル、とりあえず行こうよ。多分……断れない」
「……そうね」
もっともだと思ったのか、がっくりとうなだれたアミルを、その人は嬉々として連れて行った。俺はそんな二人の後ろについて行く。
話ってなんだろう?
「あっ……申し遅れました。私、この町の町長をさせていただいている、ウェルと申します」
「町長さんなんですか」
今俺達は、町長さんの自宅に通され、お茶をご馳走になっている。小さな花が入っているこのお茶は、ここの名産品なんだとか。
「それで……あの、ウェル町長。どうして私達を呼んだんですか?」
アミルがそう問えば、町長さんは少しだけ表情を曇らせて、教えてくれた。
「森のローレライの正体を、探ってきていただきたいのです」
「「森のローレライ?」」
アミルと二人して、同じ言葉を町長さんに聞き返す。
俺達の勢いに気圧されたのか、町長さんは、慌て気味に補足説明をする。
「ここから北西に少し行ったところに、森があるのです。その森には大きな湖があり、そこにローレライが住んでいるという噂なのです」
「えぇと……何故、私達に頼むのでしょうか。町の方で、調査員を出せば済むのでは……」
「それは……この町で、森のローレライによる被害者が出たからなんです」
「被害者?」
思わず聞き返すと、町長さんは「はい」と言って続けた。
「死者は出ておりませんが、町の皆は怖がって森に近付きもしなくなりました。なので、旅の方々に頼むしかないのです」
お願いします!と頭を下げた町長さんに、俺とアミルは顔を見合わせる。
被害者がいるとなると、あまり放っておいてよいものではないのだろう。
「あ、あの……分かりました。お引き受けします」
アミルがおずおずと言えば、町長さんは「ありがとうございます!」と大きな声で返してきた。……そして握手を求められるアミル。
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