一章

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「ああそうだ。謝礼ですけれども、まず前払いにこちらをどうぞ」 さんざん握手をして落ち着いた町長さんが、俺に布袋を渡してくれた。布袋の中身は、お金だった。目算だが、多分この一袋で高い宿屋に余裕で泊まれるくらいの、金額。 「森のローレライの正体を調べてきていただければ、これの倍を謝礼としてお渡しします」 町長さんのその言葉に、俺達はとても驚いた。 前金をもらった俺達は、そのまま町長さんの家に泊まらせてもらうことになった。どうやらこれも、前金の一環らしい。 寝床どころか、夕食や風呂まで提供してもらった俺達。町長さんに悪いかとも思ったのだが、遠慮する隙もなく、いつの間にやら布団に入らされているのが現状だ。 何日かぶりのちゃんとした布団に、俺はすぐさま眠ってしまった。 朝。……なのだろう、頭まで布団を被る主義の俺には、今が何時かも分からない。 「ソール、起きなさい!」 けどアミルに怒鳴られてるし、多分相当寝過ごしてる。 「ん……はよ、アミル」 「おはようじゃないわよ」 顔面に俺の荷物を投げつけられた。痛い、鼻が特に。 そそくさと身支度をし、アミルに押されながら、俺は町長さんの家を後にする。 なんか知らないが、アミル曰わく町で買い物をするのだとか。 買い足すものは、せいぜい食料だったので、ちゃっちゃと買い物を済ませて、町から出る。 「西の方、だっけ?」 「そう。だから、こっちの道を真っ直ぐ行けばいいはず」 アミルの指差す方を見れば、長い長い道が、目の前に延びていた。森までの道のりは、かなり遠そうだ。 ……などと思いながら歩いたが、思ったよりも早く、森の前まで辿り着いた。小さな宿屋が建っている。 「意外とかからなかったわね。野宿も一回で済んだし」 アミルも似たような考えを持っていたようで、拍子抜けした顔でそう言っていた。 とにもかくにも、それなりに早い内に宿屋に泊まれた俺達は、明日から入る森について話し合った。 その最中、アミルふと思い出したように話し始めた。 「そういえば、この辺りって水の一族が度々現れるそうよ」 「水の……一族?」 疑問系で返せば、アミルに溜め息を吐かれた。 「アクア家よ。……もういいわ、私寝るから。おやすみ」 「あ、うん。おやすみ……」 呆れられてしまったようだ。 まぁ、湖なんてすぐ見つかるだろうと楽観して、眠りについた。 明日からは森を歩くのか……。
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