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「ねえ、ルーナ」
「なんだ?」
幾らか昔に捨てた名前は、いつしか新しくなっていた。「ルーナ」と名付けたのは、他でもない彼だ。
「ルーナって、何か欲しいものあったりする?」
「急にどうした……」
「いいから!」
私は唐突な質問に、日課である剣の手入れをしながら、適当に……だが真面目に答えた。
「剣が……欲しいな。それか杖」
「杖?……あぁ、ルーナは魔法も使えるもんね」
それなりに納得したらしく、彼はそれ以降似たような質問はしなかった。
それから二週間後、彼は私にとある物をくれた。
剣と杖とが一対となった物を。
「これは……」
「今日でちょうど、ルーナが僕と会ってから一年なんだよ。だから、まあ…記念品?」
「そっちの説明じゃなく、この物自体の説明が欲しいのだが……」
私はその物を持つ。剣と杖が逆向きにくっついたこれは、この間近所で子供が振り回していたバトンに酷似している。
「ルーナ、剣が欲しいって言ったじゃん?もしくは杖って。僕はルーナにどっちをあげたらいいかなって悩んでさ。最終的に、いっそ二つをくっつけようと思って。考えに考えを重ねた結果が、それ」
「何故、一つに……別にどちらか一つで充分だぞ、私は」
「でも僕、ルーナの剣さばきも魔法も好きなんだ。だから、一緒にしたらもっといいものができるんじゃないかな、って」
彼は時々、変わった思考を持っていると思う。バトンのようなそれを、彼は「ラディウス」と呼んだ。私もそう呼ぶことにする。
次の日から、私はラディウスを持って狩りに出るようになった。
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