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俺は鍋の火を切り、料理の盛られた皿を持ってリビングへ向かう。
が、リビングに入る前にキオウさんがテーブルで調合をしていることを思い出して足を止めた。
しまった、先に片付けてから持ってくるべきだった……いや、異空間に仕舞えばすぐに片付けられるか。
まぁ一度台拭きでテーブル上を拭かないといけないだろうが。
引き返すことはせず、止めた足を再動させてリビングに入り、テーブル上へ視線を向ける。
「……思ったより片付いていたな」
しかし、どうやら多少固めていた片付ける覚悟は無駄だったようだ。
千切れた葉が散乱していたり、すり潰した粉がばら撒かれているなどという様子は一切無く、むしろ使った物は使った物としてきちんと分けられているように見える。
そしてきちんとテーブル上を整理をしたであろうキオウ嬢は、本気度を表すようにたすき掛けをして袖が邪魔にならないようにしつつ、黙々と薬研車を前後に動かしていた。
……なんだ? 俺は若干本気にさせるようなことを言ったのか?
まぁ別にそれならそれで構いはしないんだが……袖から出てきた腕がとても白くて細く、本当に華奢に見える。
これであの長刀を軽々扱うことを考えると、戦場で少女と油断した連中の首があっという間に飛ばされる光景が目に浮かぶようだ。
ん? でも封印前の体は今の状態よりも成長した姿だったんだよな?
……それでもあんな長刀を振るうような姿になるようには思えないな……鬼人族というのは皆こういうモノなんだろうか。
「どうしたの?」
「ん? ……ああ、なんでもない」
俺が立ち止まってキオウ嬢を眺めていたのが不思議だったのか、少し首を傾げて俺へ問うてきた。
とりわけ答えるほどのことを考えていたわけではないため適当に答えた俺は、足を進めて手元の料理をテーブルへ置いていく。
「それで、何処までやった?」
「二つ目まで。今は三つ目の途中」
んん? 結構速いな。
紙に書いた三つ目は時間的にオマケ程度に考えていたのだが、どうやら少々時間計算が拙かったようだ。
水に濡れた布巾を創造しつつ、調合の済んだと思われる物が置かれているテーブルの隅へ足を運ぶ。
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