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20XX年12月24日。
報道やら何やら見る限り、地球滅亡の日は明日なんだとか。
実家に戻るわけでもなく、辞めたいと思っているのに、ブツブツ言いながらも結局この日まで働いている。
夕方開店の店がある場所は、社宅と言われる場所の真向かい、といった奇跡の立地。寝坊しない限り、まず問題ない。
一方通行の車道をいつものように突っ切り、店へと向かう。
今日が最期の日と呼ばれる日でなければ、こんなこと考えないのだが、いつ見てもこの町、高齢者しかいない。実家に戻ると言って、旅立っていったアルバイトを見送ってきたが、とにかく若い人はいない。
隣にある別の有名居酒屋の店長が寒いなか、店に出て外の様子を見ていた。ベテランなのだろう。会話をするのが非常にうまい。
「あれ、副店長さん、今日出勤なの?」
「俺は独り身ですからね。記念すべき日こそ出勤しなきゃ。店長さんこそ、出勤じゃないですか、奥さんと一緒にいなくて良いんですか?」
「ははっ。今日売れなかったら店閉めて早く帰りますよ」
ではまた、と二度と果たせない約束をする。彼が早く家に帰って家族と過ごせることを祈りたい。
俺の店はどうなるかな。まぁ、最後の最期まで酒飲みたいってお客様が来る限り、店あけるんだろうな。
「はよーございまー」
入り口の自動ドアがあき、そこにいるだろう人物より先に挨拶をする。案の定、その人物はパソコンで何かの画面を確認していた。
この店の店長、古田くん。俺の同期。ボサボサ頭で、起きたばかりです、といった髪。清潔にしろよ、といつも注意していたら、アルバイトから古田の親父というあだ名をつけられてしまった。たまに、オカンと言われるのが腹立たしい。
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