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迷いなく引く、優しい腕。
視界に映るコタ君は、風を切るように私の手を引いて走り抜ける。
ドキドキに満たされた胸があまりにも心地好くて、ずっとこのままでいたいと願った。
「……馨っ、優架もいいよな?」
やっと達城先輩に追い付いて、立ち止まったコタ君。
まだたくさんの三年生で溢れる渡り廊下がざわめきを増した。
ゆっくりと離れていく手に淋しさを感じながらも、後ろめたさからコタ君の後ろに隠れて。
恐る恐る達城先輩を窺うと、先輩はコタ君に答える事なく私を見て鼻で笑った。
「あんたは最初からそのつもりでしょ?」
「……っ」
羞恥心を駆り立てられるような言葉に、思わず言い返しそうになる。
先輩が今すぐ来いって言ったんじゃない。
「……とりあえず屋上でも行こうか」
いつもいつも、先輩は話を逸らすのが上手くて……ズルい。
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