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しばらく荷物を床の篭に入れるため少し頭をカウンターの下にやってから、頭を戻すと、目の前におしぼりが用意されていた。周囲に人は見えないため思わずキョトンとしてしまったが、位置的にもタイミング的にも自分のものかとおしぼりを手にとってみた。
こだわりなのか安い店で出てくる企業任せのビニールに入ったものではなく、人肌という絶妙な温度な上に湿り過ぎず乾きすぎず、完璧に最適が保たれたおしぼりだ。
それに少し感嘆しながら手を拭いていると、カウンターの向こう側に女性が立っていた。いや正しくは現れたと言った方がいいかもしれない。
先ほどまで人の気配すらなかったこのカウンターに、バーテンの服を着た彼女(あまりそういう趣味があるわけではないが胸で性別を判断させてもらった)が逆消失マジックのようにいきなり現れた
「…驚かせてしまったようで申し訳ありません。私は心音聖葉。当店のバーテンであり店長でもあります」
私があまりにも唖然とした表情だったからか、大丈夫ですか?とつけたして小首をかしげる
こちらが大丈夫、と答えると聖葉は小さく頷いてから注文も聞いていないのにシェーカーを準備しはじめた。そして棚の装飾に近いくらい自然に配備されたグラスを手にとり曇りがないかを確認していく
グラスをじっくりと眺めつつ、グラス越しにこちらを見ているその顔はかなり聖貨に似たものがある。目の開き具合に関しては天地の差ぐらいあるのだが、骨格や鼻だち、口元など様々な点で酷似していた
先ほど姉さんと聖貨がいっていたし、さすがは姉妹といったところだな…
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