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担任は初めてだと言うその姿は、確かに女の子が憧れる容姿だった。
背は壱哉より少し高い位で、 柔らかな低い声が耳に心地よい。
スッと鼻筋の通った優しげな顔も、チョークを落として慌てる姿にも、既に目がハートになってる子が何人もいる。
黒板に書かれた伊藤英俊と言う文字をぼんやり眺めながら、お決まりの自己紹介を聞いてた。
「次、星野」
「星野葵、中学の時は陸上部でした。
趣味は特にありません、よろしく」
嘘。
趣味はお菓子作りとか縫い物だけど、言う度にイメージじゃないとか意外とか言われるのが鬱陶しくて、ないって事にしている。
あたしの声はよく通る、発表の時は役に立つけど、普段は詩織みたいにふわふわ喋ってた方が受けが良い。
分かっているけど、今更どうこうは出来ないから、あたしはあたしで通している。
「ぁ…三森 詩織です。中学の時は合唱部でした。えと…高校でも合唱したいです。趣味は…歌う事?です」
ほぉら、あたしの時は引いていた男子が、ざわめいたのが分かる。
ふわふわの天然パーマに、くりくりの大きな目はちょっとたれ目で、緊張してどもるのすら可愛く見える。
文句なく可愛い詩織に、あたしもいつも癒されている。
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