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「ほ、星野……なんか呼んでるぞ?」
「そんなに言いにくい名字でも無いでしょう?どもんないでくれる?」
入り口近くに座っていた男子に呼ばれて席を立つと、その前を通りながら一言苦言する。
「なんだ、壱哉か」
「まだか?もう体育館行くぞ?」
あたしの憎まれ口は、あっさりスルーされて、あたしがカバンを取りに行っている間に、先に行ってしまいそうな壱哉の後を急いで追いかけた。
「じゃあね」
「うん、葵ちゃんも頑張ってね~」
詩織は今から合唱部の練習を見に行くらしい。
澄んだソプラノはまるで小鳥のさえずりのよう。
…強い声ではないけれど、確実に音を外さずに歌える詩織は既に部長に勧誘されていた。
…あたしだって、陸上部があったら…
なら、陸上部のある学校に行けば良かったんだけど、何となくでここを受けて受かってしまった時。
ここが母校である両親があんまり喜んだから、そのまま入学を決めてしまった。
結局あたしも流されて生きている。
何になりたいとか、将来どうしたいとか、なんのビジョン持ち合わせていない。
ちょっと性格はきつめだけど、どこにでもいる普通の女の子。
…な、筈。
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