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回りの子達は楽しげに、親の運転する車で帰るのに、あたしと壱哉はその脇をとぼとぼと駅に向かって歩いている。
これは、かなり寂しい……
菫ヶ丘学園は、丘ってだけあって帰り道は下り坂だ。
でも……毎日この坂を登るのかと思ったら、今から憂鬱。
坂を下りて、ちょっと歩くと駅がある。
ピカピカのパスケースを取り出して改札を通り抜けると、階段を下りて二番ホームへ。
チラッと後ろを振り返ると、黙ったまま壱哉もついてくる。
……別に、気になった訳じゃ無いけど。
どーせ作んなきゃいけないんだもん、壱哉のごはんも。
「なぁ葵……本当にカレーなのか?人参の……」
どうやら、丘を降りる間ずーっと人参カレーについて、悩んでいたみたいだね。
「ご要望なら」
「……出来れば別ので」
「分かったわよ。えーっと……オムライスは?」
家にある材料だと、それくらいしか出来ないかな。
わざわざ買い物に行きたい気分じゃないし。
オムライスと聞いて壱哉の顔に、やっと笑みが見えた。
……別に、壱哉の好物だから作るんじゃ無いけどね。
ただ、今ある材料だとオムライスくらいしか作れないってだけ。
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