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家に帰ると、自分の家みたいに上がってリビングでテレビをつけた壱哉に、取りこんだばかりの洗濯物を押し付ける。
「ちゃんと畳んどいてよ、半分はあんたのなんだから」
「おー」
両家の親は昨日から温泉旅行に行っちゃってるからね?
昨日の分は、壱哉の服も洗濯してあげたの。
え?あたしの下着?
それは勿論別にして、洗面所の隅に干してある。
壱哉のはそこに積んであるわよ、見ても何とも思わないし。
壱哉は、その185㎝を越える長身と引き締まった筋肉質な体が自慢らしいけど、そのせいで初対面の人には無駄に怖がられる。
表情あんまり動かさないし、普段はあんまり喋んないし?
ボディーガードとしては最適かもね。
まぁ、実際はバスケ馬鹿の筋肉馬鹿なだけだけど。
そんな威圧的な見かけに成長してしまった壱哉だけれど、小さい頃から家が隣って事もあってよく遊んだ。
二人で、あちこち探検と言う名の迷子になりに行ったり。
窓から糸電話をしたりした。
……なんせ隣だからね、しかもあたしの部屋の窓を開けたら、向こうに見えるのは壱哉の部屋の窓だ。
年頃の女の子にとっては、ゆゆしき問題だと思う。
「どこに?」
「あたしのはソファーの隅に置いといて。
あんたのは持って帰ってよ」
「ん、旨そう」
「もう出来るから、お皿とスプーン出して」
壱哉にとっては勝手知ったる星野家の台所。
あたしも遠野家の台所は、無駄に熟知している。
皿を出せって言ったのはあたしだけど、壱哉が入ってくると、決して狭くはない台所がやたらと窮屈になる。
まったく、小さい頃から食べてる物はそんな変わらないのに、どうして身長がこんなにも違うのか……
やっぱり量かな。
壱哉用に大皿にオムライスを作ると、あたし用に普通サイズのオムライスを作って、サラダと一緒に食卓まで運ばせた。
後から麦茶をグラスに入れて持っていくと、お預けくらった犬みたいにそわそわした壱哉が待っている。
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