312人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、遅れるぞ」
「もう!何で女の子の部屋に勝手に入るかな!
てか、玄関開いてたっけ?」
「開いてた。女の子って自称すんなら、ちゃんと閉めとけよ。危ねぇな」
「正真正銘女の子です!てか出てってよっ!」
部屋のドアを開けている壱哉に怒鳴りながら、慌ててブレザーのボタンを止めると、さっさと歩く壱哉の背中を追った。
これも何となく。
だって、いつの間にか歩幅に大きな差が出来ていて、壱哉の後を着いていく時はいつもこうだ。
「俺、明日からもっと早い時間に出るから、一人で行けるか?」
「なに子ども扱いしてんのよ!行けるに決まってるでしょ?駅からは詩織と一緒だし」
「そうか」
フッと柔らかく笑うと、あたしの頭に手を置いた。
それが何だかこそばゆくて、直ぐに振り払ってしまった……
その後は黙って歩いていたけれど、駅が見える所に来ると同じ制服を着た詩織の姿が見えた。
三森詩織(みつもり しおり)、小学校の時からの親友で、あたしと違って優しくて儚げで守ってあげたい女の子の代表だ。
あたしは、殺しても死ななそう、なんて言われますけどね。
えぇ、そうでしょうとも。
最初のコメントを投稿しよう!