椎名 雷斗

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「ただいまー」 「おかえり」 家の中はカレーの匂いが漂っていた 「お父さん、今日はカレーかな」 「そうだよ。雷斗の大好きなカレーだぞ」 僕にはお母さんはいない もしかしたら、いたって言うほうがいいのかな 僕のお母さんは、 旅行に行って来ると行ってしまったきり帰って来なかった その後、お母さんの部屋を見たら 荷物がなくなっていて、離婚届だけが置いてあった 僕は幼かったけど、それなりに察しがついた もう、お母さんは帰って来ないということを あれは、僕が小5の遠足に近くの遊園地に行った時に見てしまった お母さんらしき人がお父さんではない男の人と一緒にいるところを だから、僕はお母さんなんて大嫌いだ ずっと、一緒って言ってくれたのに 「ご飯できたぞ」 「ハァーイ」 僕はそんな気持ちを閉じ込めて 食卓へ向かった
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