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僕に訊ねてきた女子に向かって彰人は歩み寄り、いきなり彼女の頬をひっぱたいたのだ。
「悠理に謝れ!!」
彰人が女の子に手をあげるところなど、このとき以外に見たことはない。
当の女子は泣いて担任に訴えたが、他のクラスメイトからことの経緯を聞いた担任は、女子のこともたしなめた上で、彰人にも少しだけ注意した。
それまで、僕に対してぶっきらぼうな対応しかしたことのなかった彰人が怒った。
放課後、他のクラスメイトといっしょに帰ろうとしていた彰人に、僕は思い切って声をかけた。
「あの、さっきの休み時間、ありがとう」
彰人は少し照れたように笑って、
「途中までいっしょに帰ろうぜ」
初めて僕を誘った。
それ以来、いっしょに帰るようになった。休日もお互いの家を行き来して遊んだ。
今では、彰人は親友というだけでなく、ひとりっこの僕にとって兄弟みたいな存在だ。
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