第7話 小橋悠理編①

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◇  6歳の誕生日が訪れる1週間前に、両親は離婚した。  そのまま両親は、僕を迎えに来ることはなかった。  もともと、僕は物心つくかつかないか分からないころから、ばあちゃんと暮らしていた。  幼稚園に行くときも、ばあちゃんが手をつないで連れて行ってくれた。 「昨日ねー、パパとママとねー、シン君とねー、ファミレスに行ったのー」 「ふぁみれす?」 「ハンバーグとかね、グラタンとかね、あとプリンとか、いろいろ食べられるんだよ。ユウ君は行ったことないの?」  幼稚園で同じクラスの女の子に訊ねられ、僕は正直に「行ったことない」と言いたくなくてうつむいた。  グラタンもプリンも、めったに食べられない代物だった。  ハンバーグといえば、ばあちゃんがでこぼこした手で握ったバクダンみたいなアレだ。  食卓にはいつもばあちゃんと2人きりで、父と母がいた記憶なんてほとんど残っていない。
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