第7話 小橋悠理編①

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 両親が出て行ってから初めての誕生日に、ばあちゃんは僕に訊ねた。 「どこか行きたいところはあるか?」  僕は一言、 「ファミレスに行きたい」  と答えた。  ばあちゃんは、歩いて行くことができる場所にある、黄色い看板のファミレスに連れて行ってくれた。  僕はワクワクしていた。  人生初のお子様セットを注文した。  ばあちゃんは焼き魚がメインの和風定食を注文していたと思う。  平たく小さなハンバーグに、チキンライス。お子様セットを前にご機嫌な僕を見て、ばあちゃんも目を細めていた。  だけど。 「パパー、オレンジジュース飲みたい」  自分と同い年くらいの女の子が、父親のズボンを掴んでねだっていた。  ドリンクバーの前で、「ほら、コップ持って」と息子に飲み物を選ばせる母親の姿も見えた。
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