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────円形のアパート
「初めて見た」
大都会の端に円形のそのアパートは存在した。
スーツ姿の女性は手に持つ資料に目を落とした。長い茶髪が左右の視界を狭くする。
その資料によるとそのアパートは三階建てで、一回り大きい外周のフェンスで覆われ、入り口は二つ直線上にあった。
────ここで間違いないはず。
ただ資料と違うのはフェンスの内側の庭が雑草だらけなのと、曇りのせいか誰もいないかのような雰囲気である。
髪をかきあげると女性は玄関の前まで行き、扉に手をかけた。
────今時古臭い
ガラス製の扉を引いて開けるとキィッと音がした。そしておそるおそる足を伸ばしてアパートへ入って行った。
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