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「なんか今、嫌なこと考えちゃった…」
塗装の禿かけたジャングルジムを見ながら、そう言った佐倉くんは真顔だった。
「嫌なことって?」
「なんかおかしいと思ったんだよね、その子。
俺が書いてた小説の、数少ない読者の1人だったんだけど…
そう言えば、急に何の音沙汰もなくなったのが、アバターの顔が歪んでからだったと思う…
携帯止まったのかな?とか、病気になったのかな?とか、いろいろ考えたんだけどさ。
今、ふっと思っちゃったんだ……
もしかしたらあの子もあの後、自殺しちゃったんじゃったんじゃないのかな……って」
まさか、とは思った。
それはいくらなんでも考えすぎで、紗耶の件と無駄に関連づけすぎている。
これじゃあまるで紗耶の自殺が、あのアバターのバグに起因するみたいな言い方じゃないか。
けれども佐倉くんは、当時よほどその子の様子が気になったらしく、神妙な顔で自分のスマホを取り出した。
「俺の4年前のブログに、その子との会話が残ってるんだ。
ほら、コメント帳は字数制限されるから、俺らはブログを使って雑談してたんだよね」
今はたまにしかブログの更新を見ない佐倉くんだけど、何年か前までは相当のブロガーだったらしい。
古い履歴をかれこれ5分くらい探したところで、
その子の痕跡が残る最後のブログにたどり着いた。
「ほら…やっぱりなんか変なんだよなぁ…」
言いながら手渡された佐倉くんのスマホで、
わたしは2年前の12月の日付が残る文面を目で追う。
内容は……
別段おかしなこともない、ごく普通のものだ。
【紫焔】という中二病丸出しハンネの佐倉くんが、ランキング上位に恋愛物ばかりが来ることを嘆いている。
それに対して、ケータイ小説ユーザー層を考えれば仕方ないというコメントの、【卍郎】と【未咲】。
【remon】という人が、【紫焔】も恋愛書いてみれば?とすすめ、
【紫焔】は経験がないとうなだれる。
他にも何人かのハンネがちょこちょこコメントしてたけど、
まぁ、いたってどこにでもありそうな会話。
けれども、後半。
不穏に一変したやり取りに、わたしは瞬きも忘れて画面に食いついていた。
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