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わたしの頭の中で、ひとつのハンネが激しく脈打っていた。
“星影レイミ”
紗耶のコメント帳にあった、書き手の名前と同じ。
その書き手が、何年も前に自殺している?
では、【すぴん】に書き込みを残した星影レイミは、また偽物なのだろうか?
佐倉くんの友達だった【未咲】って子も、【星影レイミ】の小説を読んでいて、
そしてアバターの顔が突然歪んだ。
佐倉くんが言うには、未咲ちゃんは以降『どりんくば~』に現れないまま、数日後には突然退会していたらしい。
偶然の一致で片付けるには、あまりにも出来すぎている気がする。
これって…どういうことなのか?
頭が混乱してくる。
(もしかして、紗耶ちゃんの幽霊がこれを書き込んだりして)
竹内さんの言葉が蘇った途端、急激に背筋を駆け巡る悪寒。
スマホを持つ手が、急速に冷えていく。
「ね、おかしいでしょ?
既に死んじゃった人の小説読んでるとか言い出してさ。
精神状態ちょっと大丈夫かなって…
あれ、梅田さん…?
どうしたの?」
「紗耶も…
紗耶もね、星影レイミの小説読んでたみたい……
【すぴん】のコメント帳に、星影レイミからの書き込みがあって…」
急に顔色が変わった佐倉くんは、急いで【すぴん】のマイページを確認し、
確かにわたしの言った通りの書き込みを凝視したまま、しばらく無言になってしまった。
「佐倉くん…なんか怖い…」
少し考え込んでいた佐倉くんが、思い立ったようにスマホを操作し始めた。
「何してるの?」
「『どりんくば~』のサポートセンターに問い合わせのメールを打ってる。
【すぴん】の顔が歪んだのが、アイテムなのかバグなのか。
あと、コメント帳の時刻表示のズレについても、システムの不具合だったのか」
トップページの運営からのお知らせには、不具合の報告なんてなかった。
だとしたら、ごく一部の小さな障害で、報告するまでもないと考えたのかもしれない。
でも、もしそうでなかったなら……
わたしの視界には、公園のモニュメントが映っていた。
奇妙にうねくったブロンズの、不可解な形。
何を表現しようとしたのか、
どんな意図で造られたのかもわからない。
ただ、今のわたしには、
それが無性に心を掻き乱されるカタチに映っていた。
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